研究内容

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モット転移系における電子物性の開拓

mott 強相関電子系においては、電荷・スピン・軌道等の各自由度が強く顕在化し、電子の集団応答は複雑かつ多彩なものになります。 この特徴は電子相関が強く残る金属領域(モット転移近傍)において最も顕著に現れ、銅・マンガン・コバルト酸化物等において 高温超伝導・超巨大磁気抵抗効果・巨大熱電効果をはじめとする様々な興味深い現象がこれまでに発見されています。 私たちはこの強相関電子集団の電子状態を研究し自在に制御することで、新たな電子物性の開拓を目指しています。

フラストレートした磁性体の電気磁気応答

multiferro 磁性体中でスピンはお互いに相互作用しており、平行あるいは反平行に配向した秩序が好まれます。 ところが複数のスピン間の相互作用が競合した系(フラストレーション系)では、込み入ったスピン秩序を示す場合があります。 複雑なスピン秩序が発達した物質中では磁性と誘電性が結びつき、電場に対して磁化の応答あるいは磁場に対して電気分極の応答を示すようになります。 磁性と誘電性の相関現象の起源の追究、新規な電気磁気応答を示す物質の探索を行っています。

ナノスケールスピン渦構造の物理

skyrmion 特殊な磁性体でスピンが渦を描いて並ぶナノスケールのスピン構造 (スキルミオン)が発見されました。 そのトポロジカルなスピン配置のために、電子に実効的に巨大な磁場をかけたり、微弱電流で渦を動かしたりでき、 スピンを用いたエレクトロニクス(スピントロニクス)への応用が期待されています。 私たちは薄膜作製・構造の直接観察・電気磁気応答の観測など多彩なアプローチでスキルミオン磁気構造がもたらす新しい物理の開拓を目指しています。

表面ディラック電子状態の解明

topological 重い元素を含む物質にはその大きなスピン軌道相互作用により、物質内部は絶縁体であるにもかかわらず表面だけは電流が流れる特殊な金属状態を持つ物質相が発現し、トポロジカル絶縁体と呼ばれています。 表面の金属状態の電子は質量ゼロ(ディラック電子)かつスピン偏極していることからスピントロニクスの観点から注目されていて、他にも従来の物質では考えられなかった物理現象が多く予言されている全く新しい分野です。 私たちは薄膜作製やデバイス化などを通じて、トポロジカル絶縁体の表面ディラック電子系の生む物理現象を探究しています。

高効率熱電変換

te 熱と電気の交差相関効果である熱電効果は持続可能なエネルギーの解決策の一つとして注目を集めています。大きな熱電効果を示す“熱電物質”は、廃熱を用いた発電/コンプレッサーを使用しない冷却を可能にします。まだその効率は高くなく私たちの生活のごく一部にしか実用化されていませんが、世界中で活発な開発が進められています。私たちは特殊なバンド構造や強相関電子系の多自由度(高いエントロピー)に基づいた高効率熱電変換を、高圧合成/薄膜作製/バンド構造計算といったあらゆる手法を用いて、実現させようとしています。

スピン軌道相互作用が拓く新しい物性

te スピン軌道相互作用とは、スピン角運動量と呼ばれる電子の自転による磁気モーメントと軌道角運動量と呼ばれる電子の軌道運動による磁場との相互作用のことです。巨大なスピン軌道相互作用が働く5d電子系酸化物においては、バンド反転などのトポロジカルな効果が生じ、今までにない新たな物性が発現する可能性が指摘されています。私たちは、反射分光法を用いて電荷ダイナミクスを観測することにより、その物性の解明を目指しています。

具体的な研究テーマは多岐に渡っていますが、その一例としてウェブサイト上で2003年度分から博士論文・修士論文・ 卒業論文の学位論文の要旨を紹介しています。詳しくは、学位論文紹介のページをご覧下さい。